ちょっとアナログ時計について考えてみましょう。
唐突ですが、みなさん、なにかアナログ時計について、思うところなどございますか?
小学校低学年の方であれば、あれ、読むの難しいねん、分かりづらい!と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
大人も含めてそれ以上の方であれば、上記を読みながら、いままさにこう考えているところかもしれません。
そういえば、これだけ、いろんなものがデジタルになったのに、アナログ時計は現役バリバリやな、と。
子どもに時刻を読ませるにしたって、デジタル時計の方が容易ではなかろうか、と。
さて、ここで考えてみます。では、なぜアナログ時計が廃れないか。それは、その方が優れている点であったり、他方にはない点があったりするからです。では、その点は何か。(ここで、対比の観点を探ることや想定することは国語力の根幹をなしますよ)
「時刻」を読むなら、デジタル時計の方が容易だということに異論はないでしょう。
「時間」であれば、いかがでしょうか?
実際には私たちは、生活の中でほとんどの場合、後者を知りたくて時計を見ているのではないでしょうか。
“予定の時刻まであとどれぐらい”といったことは、アナログ時計の方が視覚的に捉えやすいのです。
こう考えると、アナログ時計って便利やなって気持ちになってきませんか。
さて、このアナログ時計の学習、あなどるなかれ。小学校低学年の頃に読めるようにならなくても、さすがに年齢とともにいずれわかってくれるだろう、そう思われているとしたら、それはなかなかに危険です。
実は、時計の読み方を比較的早期に習得させようとする学習指導要領には、高次の学習単元へのつながりの意図が感じ取れるのです。
先述の通り、私たちは ”予定の時刻まであとどれぐらい”ということを、アナログ時計で視覚的に、つまり「角度」で捉えています。
「時間」(「時刻」ではなく)をとらえるということは、針の開き具合、すなわち、それらが作る角度が一瞬でわたしたちにそれを示してくれているということ。この数量的感覚は当然、そのまま「角度」の学習において重要な視点になってきます。
また、実は、「時刻」をアナログ時計で読むことも、算数の高次の学習単元の素地になってきます。そう、「数直線」の勉強ですね。”1目盛りあたりいくつ”を見つける感覚は数直線の学習において非常に重宝するでしょう。そして、数直線が思い浮かべられるかどうか、これももう本当に重要で、中一一学期の正負の数の学習は数直線をイメージできないとまことに悲惨なことになります。
12には約数が多いこと、円とは中心からの距離が等しい点の集合であるということ…、実はアナログ時計を見ていると得られる気づきはまだまだありそうです。
中学生になって勉強が難しくなったとどうしても感じてしまいがちかもしれませんね。しかし、そういうときは振り返ってみてください。それは本当に中学内容からでしょうか? 考えてみると、それこそ、小学校低学年のころ、たとえば、時計の読み方で苦労していたのではないでしょうか。そして、だったら、そこから復習することが重要なのです。なにも臆することなどない。そこから定着していないのなら、もう一度そこから練習すればいいのです。不思議なことに日本には留年制度がないので、追いつくのは大変に思えるかもしれません。しかし結局は、そうすることが一番の近道(というか、それしか道はないはずですけど)なのだということは、火を見るより明らかですよね。
たかが時計、されど時計。
①実は私たちは生活のなかで「時刻」よりも「時間」を知るために時計を見ている。
②算数科・数学科において、アナログ時計の学習は、「角度」や「数直線」といった高次の学習単元の素地をつくる。
長々と書き連ねましたが、上記2点を着地点として、終わりたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。